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続・日常に潜む恐怖

2003-09-22 Mon[暮らし]

(前章から続く)さて途方に暮れていても外に出られないので、とりあえず刑事ドラマのようにドカーンと行ってみれば蝶番がはずれて開くかも…。といっても横幅70センチのトイレ内。ドアノブめがけて手首でアタックするしかありません。どん。どん。ドアはたわむものの、ドアノブまでぶっこわれるほどの勢いにはなりません。

結局、助走付けてドアにカラダごと激突するくらいの勢いじゃないとだめなんですよね、多分。て今は冷静に言えますが、そのときは必死なもんですから手首に血がにじみ、向かいのアパートや隣人からは何事かと思われそうな大きな音で…それでも開かない。

押してもひいてもだめ、とパニックになりそうだったんですが、とりあえず武器になりそうなものを探しました。…しかし何もない。どうやったら出られるのかと努めて建設的に考えるようにしました。出られない、と考えると本当に気が触れそうだったんで。

トイレの窓を開けて、隣のアパートの人に大声で叫んで助けを求めようかとか大家さんに連絡してもらおうかとも思ったんですがなにせ裸。そのときは出る前にバスタオルを取ってもらおうとかしょうもないことまで浮かぶ始末。しかしその時点で深夜の日付変更線を越えてしまっていたため、ご近所中の騒ぎになることは避けたい。(しかし生命の…とここでも葛藤)

結局、ノブ本体を回さないといけない。しかし工具はない。要は、ドアノブの中の何かを回せればいいんだし…このカラカラいうノブは取ってしまおう。いや取ってしまって良いのか。本当に処置なしになってしまったらどうしよう。ドアノブはネジで締まっているし、取ることはできても元通りにはできないし…うーん…どうしたものか…ええい、一か八かだ。

ドアノブを持つと、ムリムリムリムリっと下にねじって、ぐぐぐぐ…と力を込めます。普通ならちゃんと取り付けてあるからそれだけでは取れないと思うんですけど、もともと反対側が取れているのとねじ穴が少し広がっているせいで、取ることはできました。

すると中に、4角形の穴を発見。そうか、この穴をてこの原理でノブを回して開け閉めするのか。ふーん、とドアの原理について考えたりなんかして、しかしこの穴を回すにはこれと同じくらいのなにかがないといけない。ああ、この穴ラチェットでカタカタ回したい。

何もないことは分かっていますが、もう一度トイレを見回してみます。うっ、いくら見たって哀しいほどに何もないぜ。

試しにその穴に人差し指を入れて回してみます。しかしノブでのてこ原理では楽々回るものの、指くらいじゃ容易に回りません。困った、本当に困った。これができなければマジで出られない。

我に返ると、少しずつトイレの中の温度も上昇してきて汗をかき始めていました。この状態で朝を迎えたくない…いや迎えたとしても、誰にどうやって伝えれば良いのか。ま、まさか誰かが携帯に出ないのをおかしいと家に来てくれるまでこのままなのか。っていうかそれはいつなのだ。うわ、まじやばい。ちょっとパニくりそうだ。

よし、今度は親指で…ああ、重い、回らない…だめか、だめなのかこれでも…

もはや、と思われたその瞬間、ついっとその穴が回ったような気がしたその瞬間、気が付くと私は台所に素っ裸で立っていました。ただ、ただ呆然と。

みなさん、生きているって素晴らしい。というか、ドアノブはちゃんと修理しておきましょう。これじゃトラウマになりそうだよ私…トイレでしにたくねえぇ…
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