妄想Web制作エンターテイメント映画
2007-10-23 Tue[コラム/雑記]
21XX年。Web制作業界は大きく変貌を遂げていた。
それは、わずか数年前に発売されたWeb制作用オーサリングツール「真っ黒メディアDreamWeaverエボリューション・インテグラーレAMG GT-FOUR enfini TYPE-R Version NISMO」の台頭である。
デザイン、レイアウト、ライティング、そしてコーディング。Web制作からアプリケーション、プログラムまで。
顧客のデータや好み、予算を入力すれば、Web上のすべてのアーカイブを検索し、二番煎じのようなそうでないような流行遅れでないデザインを使い、SEO/SEMにも優れたオサレでイケてるWebサイトが全自動でできあがるようになったのである。数千ページ規模だろうが10,000ページを超えようが大幅に人件費が削減でき、ぶっちゃけ入力する人ひとりがいればよかった。これにより、Web制作業界と言われていたものは完全に崩壊した。
個人の世界でさえも例外ではない。ヒントは、今あなた方のブログのサイドにいたりいなかったりする、ブログペットだ。2007年当時には「salsaは、マニフェストしたかったの。」などと訳のわからないことを言っていたヤツらだが、それは単なるカモフラージュに過ぎなかった。
長い年月をかけ、完全に自我を持ったブログペットたちはブログ主の念を読み取り、同じような文体で同じような感性を持ってブログを更新し始めたのである。コメントやトラックバックも彼ら同士で応酬し合うものだから、ブログ主はなーんもしなくてよかった。自分のブログを見たことがないというブロガーも出現した。実際、ネットにおけるコミュニティに、人間が存在しなくなって久しい。
しかし、ここで一つの事件が起こる。
イギリス郊外にある一軒の家。腕ききのエンジニアであるクロ・レッツ(32)は、いつものようにブログペットと交信しながら朝刊を読んでいた。妻が入れてくれる、カップに並々とつがれた甘いカフェ・オレを飲みながら、朝食後の時間をゆっくりと過ごすのが彼のお気に入りなのだ。
クロはその日、ブログペットの様子に、妙な違和感を感じる。交信に、かすかに雑音が混じる。ペット自体もかなり情緒不安定で制御ができない。こんなことは初めてだ。耳をこらすと、その雑音と思っていたものにある種の法則があることがわかってきた。
調べてみるしかない。マシンを立ち上げるクロ。
タスクトレイに常駐ソフトが立ち上がるまで数秒。だが、スタートアップに入っていた(OSにバンドルされているのだ)「真っ黒メディアDreamWeaverエボリューション・インテグラーレAMG GT-FOUR enfini TYPE-R Version NISMO」だけが起動しない。直接立ち上げようとしても立ち上がらないのだ。「今日はたまたまマシンの具合がおかしいのかな」。クロは思った。
そのときだった、彼の携帯電話が鳴ったのは。
「クロかっ?」
出るが早いか、せっぱ詰まった金切り声が聞こえてきた。友人のアロマ・ブラックだ。
「おかしいんだ! 何かおかしいんだよ! 至急オフィスに来てくれ!」…
「なんだ、これは…」
「クロ、このサイトはレイアウトがずれまくっているわ!」
「こっちは画像がガビガビだ! 写真がGIFで、…32色だと?」
「JavaScriptがエラーだらけよ、クロ!」
「リンク先が全部書き換えられているわ! 毎、日考…なにこれ?」
「これではFlashが重すぎる! まったくページが読み込めない!」
「文字コードがめちゃくちゃで文字化けしてるわ! こっちは誤字脱字だらけ。いったいどうしたっていうの?! 直そうにも、ソフトが動かないんじゃ…」
・・・・・
このままでは、地球上のWeb制作がだめになってしまう。
「今、ソフトに頼らずWebが作れるのは…」
そうだ、あの人を呼ぶしかない。今となっては、あの人しかコーディングをすることができないのだ。その名はタグ・ウッチ。とうに90歳を超えている彼は、アメリカの片田舎に住み、この時分に昔ながらテキストエディタとペイントのみでWeb制作やプログラムをこなす変わり者だ。
「ソフトが大暴走を起こしている。巧妙に仕組まれた時限爆弾のようなものじゃな。そう、これは…」
「原因がわかったのか、タグさん?」
「…ブログペットの反乱じゃ」
「反…乱だと?」
生かしておいてはならない。すべての根源は、21世紀初頭に現れたブログペットだったのだ。巧妙に人々の、ネットの間に浸透したブログペットは、深くシステム内部まで介入し、あのソフトにある種の時限爆弾を埋め込んでいたのである。
・・・・・
「お父さん! だめー!」
そこに現れたのはクロの3歳になる娘、パスモだった。
「パスモ、何してる、離れろ! 大人しいフリをしていても、そいつは凶悪なブログペットなんだ!」
「この子は! このオメトドだけはいい子なの! ケガまでして私を助けてくれたのよお父さん!」
「キューンン!」
「パァスモーーー!」
「オメトドーーーーーっ!」
・・・・・
タグは言った。
「クロ、これは、ワシの力だけではどうにもならん」
「タグさん! ではどうしたら…」
「クロ。実はイスカンドロメダ星より、メッセージが届いているのじゃ」
「イスカンドロメダ星? はて、どこかとどこかで聞いたような」
「そこにすべての答えがある。時間がない。行け!」
・・・・・
ブログペットとの交信で聞こえた音の意味とは?
ソフト大暴走のカラクリと全貌、そして本当の目的とは?
誰が敵か。何が真実か。すべての謎を明らかにするべく、クロはイスカンドロメダ星へ旅立つ。
いそげクロ! 人類滅亡まで、あと365日。
(…なにコレ)
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