『ボタニカル・ライフ』
2005-07-12 Tue “その他”
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今さらながら、あのいとうせいこう氏がベランダ園芸家であることを知った。
何かの偶然で、ネットで連載していることを知ったのである。
→いとうせいこうの自己流園芸ベランダ派(朝日マリオン・コム)
そして深夜、本日のタイトルでもある氏の著作『ボタニカル・ライフ』がAmazonで売られているのを知った私は即座に注文。
3日後には手にし、3時間後には読破。
その昔『ノーライフキング』や『難解な絵本』を買って読んだりはしていたが、最近はテレビ「虎の門」でお見かけするくらいで著書にはとんと無縁だった。ましてや、ベランダーとして名をはせていたことなどつゆ知らず。
『ボタニカル・ライフ』は、WebサイトWATCH SEIKOにて連載されていた、ベランダーとしてのエッセイがまとめられた著書である。ここでいうベランダーとは、ガーデナーに対抗して、庭のない都会暮らしのベランダで植物生活を楽しむ人という意味で、氏の命名による。
いやしかし、やはりいとうせいこう氏である。
植物に興味がなくても…いや、やはり同じベランダーとして植物を愛するものだからこそ楽しめるこの本。
例えば、アボカドを実生で栽培するくだり。
アボガドの種を捨てる時ほど、その不条理な重さに悩むことはあるまい。あまりの重さで種は他のゴミをかき分け、必ずゴミ箱の底まで到達する。(中略)買ってきたアボガドよりも、種の方が重かったのではないかといぶかしむほどだ。いや、たぶんそうに違いない。
(1996・10・18 キリストとしてのアボカド)
冬となり、多くの鉢を屋内に退避させなければならなくなったくだり。
都会の園芸野郎にとっては厳しい季節の到来だ。そもそも部屋が狭いからこそベランダを利用していたのである。春が来たら見てろよ、畜生め。鉢を全部ベランダに出してやるからな。(中略)そして、反動は春から夏にやってくる。思わずたくさんの鉢を購入してしまうのだ。こんな風に、都会の園芸野郎は悪循環を生きている。
(1996・12・3 冬の都会派)
忙しい中、土の入れ替えをするくだり。
植物図鑑的には当然草木の種類によって土のあれこれや石灰の配分などがあるのだが、(中略)我が家にその余裕はない。出来たら即使用。つまり、風呂から出た途端に就寝を要求される子供みたいなものだ。それで風邪をひくようなガキなら要らん。
(1997・3・24 消え去るもの)
こんな調子で、氏のボタニカル・ライフは綴られる。
春になって、幹のあちこちから出没するミドリに驚嘆するせいこう氏。
引っ越しで、植物の住みやすさを第一に考えて悩むせいこう氏。
サボテンの植え替えで、軍手越しに突き刺されてイライラするせいこう氏。
氏の植物ラインナップは花が咲くもの中心なので、自分のベランダとはだいぶ華やかさが違うはずだが、それを差し引いても共感できる話ばかり。それが、「植物ってすばらしーねー、園芸とはこうで、こうで、こういうものだねー」とはならず、あくまでも氏の特徴である淡々とヌけた、ブラックな口調で綴られるのである。
愛ですぎるわけでもない、気を遣いすぎるわけでもない。
咲かば咲け。環境がひどければお前が慣れろ。
緊迫した駆け引きの中で言葉とは裏腹に、無くてはならない存在になっている、それが植物。ベランダーの生きる道。
ネットで調べてみると、「ベランダー」を自称されている方はすでにかなりいらっしゃる。そこで不肖サルサ、僭越ながら今日この場で、「ベランダー」を名乗ることを宣言するものである。わーい。
最後に。
「だが、俺はもう知っている。
それが植物を愛するということなのだ。
そして、やつらが返してくれるものといえば、新しい葉ひとつ。
つまり、体が震えるほどの悦び。」
※本文の引用については、以下に準拠しました。
ネット上の著作権侵害、「引用」と「要約」(nikkeibp.jp)
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コメント
「ハタケンダー樹姫」です。(通じる?畑なのよ)
私も、実働3ヶ月目の新米農作業者です。
二人分の畑を一括で借りたのですが、前任者の土の手入れ次第で、同じ苗を植えても明らかに育ち具合や収穫に差がでてます。
植物は愛情を込めれば、収穫となって愛し返してくれるんですよね〜(しみじみ)
すでに新鮮なお野菜たちはいただきましたが、もうすぐ夏のおつまみたちが・・・
かぼちゃ・枝豆・じゃがいも・・・そしてスイカ・オクラ・みょうが・・・
草取りで 腰がイタタの 今日このごろ(一句)
え、エントリ違いですか??
ボタニカルライフは当時リアルタイムで読んでました。面白かったなあ。チェスにも参戦しようかと本気で思ってましたし。
読んでみたいかも。
共感できる節が非常に多い。
私はさしずめ、ベランダのカタスミンダーだけれど(^^;
ベランダ占有できませぬ。
クソー
ハタケンダー…って、なんだか今時の戦隊ものみたいですよ、樹姫さん(笑)
(いても不思議じゃないかも)
畑かあ、最近は都会の人でもそういう感じで畑を持つことが多いらしいですね。夢は自給自足です。
枝豆、いいなあ…
大豊作だったら、えと、よろしくお願いします。
アドレスはwebmaster@salchu.netですからw
#cafeさん
いえいえ、どこでもいいです。ありがとうございます。
ボタニカル・ライフ、読んでましたか、さすがです。
いやしかし、もし植物に興味なかったとしてもぐいぐいと世界に引き込んでいくあの文章力…。
プロだから当たり前ですけど、参考にしたいです。
#SCUMさん
お久し振りです。
生きてますか?w
もしよかったらトイチでお貸ししますが(笑) (←トイチは嘘です
> ベランダ占有できませぬ。
> クソー
はは、そこらへんはひとり暮らしの気ままなところで。
これでも、2年前くらいまではぜんぜん植物なんて、ましてや多肉なんて興味なかったんですからねー。
玄関の外なんかにも、しゃれた感じでなんか置きたいのだけれど、どうにもその「しゃれた感じ」というのが出せなくてw