学名のツレヅレ
2007-10-12 Fri “その他 > ツレヅレ”
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最近、いろいろ植物の本を買い込んだので、思うところをたまに書いていこうと思います。今回参考にした本たちの紹介は、またいずれ。
学名というのは、発見されている生物全てに付けられている世界共通の名前のこと。例えば私もアナタも、Homo sapiens。アナタが人間ならば…ですけど。
ハオルチアをやる人ならご存じの、レツーサレツーサと呼んでいるのはHaworthia retusa。学名がそのまま呼称として使われているものから…
「月下美人」という和名で呼ぶのが一般的なコレの学名は、Epiphyllum oxypetalum。オキシ、オキシペ…舌を噛みそうです。
「月下美人」という名前だけだとどんな花の仲間かわかりませんが、Epiphyllumという属名が分かることによって、ああこれは孔雀サボテンとか、葦サボテンの仲間なのかとわかるわけです。確かにこの大げさな花は、サボテン類特有のものとも言えます。おのずから、育て方も類推できる訳なんですねー。へー。
という感じで、学名は規則に沿ってラテン語で表記され、属名+種小名という形式が取られています。(学名 - Wikipedia)
今となってはラテン語というのもなじみがないかもしれませんが、学名がこのラテン語で書かれるわけは、今では口語として使われない、固定的な言語だからだそうですよ。これがもし英語やフランス語だとすると、国や地方によって方言があったり、時代によって口語変化していったりしてしまいますよね。
和名にしても、ヒガンバナが曼珠沙華などと呼ばれたりするように、同じ植物でもさまざまな呼び名が存在してしまいます。全ての人がその植物を同じものだと同定するのに具合が悪い。本の受け売りですが、ヒガンバナは地方によって410もの違う言い方があるそうですよ!
そんなわけで、植物をすべて分類して、ラテン語で一意的な学名を付けておこう!としたのが昔のエライ人です。ちょっと話をはしょってますけど。
で、難しいっぽい話は終わり。付け焼き刃なんで、自分でかみ砕けているのはここまで。そもそも、この「種小名」に注目するとおもろいですね、という話をしたかったんです私。
種小名のツレヅレ
種小名は人の名前だったり、産地だったり、その植物の形状なんかを表したりするもんです。私のベランダにある植物について、いくつか例を挙げてみますね。
- ハオルチアには種小名が「-a」で終わる名前が多いのにお気づきでしょうか。retusa、obtusa、comptoniana、correcta、などなど…。これはHaworthiaが女性名詞なので、続く種小名も女性名詞になる、というラテン語のきまりのため。女性名詞は-aで終わるものが多いらしいです。
- よくあるのが「○○オイデス(-oides)」という学名。ご存じの方も多いと思いますが、これは○○に似た、という意味を表します。Aloe haworthioidesはハオルチアに似たアロエ。サルコイアシのHathiora salicornioidesは、アッケシソウ属(Salicornia)に似たハティオラ属の植物、と言う意味。
- 植物の形状を表している種小名も多いですよね。
Quercus acutissima(クヌギ)のacutissimaは、「非常に鋭利な」という意味です。確かに葉っぱ、とがっています。 - たまにブログでつぶやいている黒さん、Aeonium arboreum(黒法師)のarboreumは高木状の、という意味。
- Ficus microcarpa(ガジュマル)のmicrocarpaは「小さな果実を持つ」という意味。小さい果実状の花がつくことを指して付けられたのでしょうか。
- グリーンネックレスのSenecio rowleyanus、rowはおそらくラテン語でも「縦」という意味でしょうから、縦に垂れ下がるって表されているのが推測できますね。
- ラセンイはJuncus effusus 'Spiralis'。Spiralisはスパイラル、クルクルだろうなあとわかるけど、effususは「締まり無く広がった」だそうです(笑)。確かに、うちのも、自由奔放に…
- 植物の性質を表しているのでわかりやすいのが、Rosmarinus officinalis(ローズマリー)。officinalisは「薬用の」という意味だそうです。なるほど納得。
- 産地や地名にまつわる種小名でわかりやすいのが、-ense、-ensisなどの語尾が付くもの。つまり、Graptopetalum paraguayense(朧月)は、パラグアイ産…なのかぃ?
- うちには無いんですが、-ensisで思いつくのがHaworthia springbokvlakensis(スプリングボックブラケンシス)。スプリングボックは南アフリカの地名。チワワエンシス、ってなのもありますよね。
- Sedum adolphii(銘月)の「-i」は、だれだれさんの、という意味を表します。アドルフさんに関係しているんですかね。
学名って聞くととっつきにくいけど、ちょっとかじってみるとその植物のいでたちやら、出生やら、由来やらがわかるという、けっこうおもろいシロモンなんですよ。
例えば上に挙げた、サルコイアシが似ているというアッケシソウ属のアッケシソウ(珊瑚草)。調べて「おー!」と声を上げてしまいました。なるほどそっくり。珊瑚と言えば、ミルクブッシュなんかも青サンゴなどと呼ばれますね。
ちなみにこのアッケシソウ(珊瑚草)、北海道の湿地帯などにいる植物なんですが、秋になると茎が赤く染まり、群生している場所は右の写真のような赤絨毯の様相…うわー、これすごい。見に行きたい。…とか、無駄な(じゃないが)知識が増えるわけですね。
もちろん、学名学名って神経質になることはなくって、それが和名で親しみがあれば和名だけ知っていたって良いし、名無しだって可愛がる植物には変わりないわけです。分からないものをしゃかりきになって同定しなくたって、それは愛する植物です。私もハオルチアや葦サボは都度調べようとはするけど、覚えはしないです。プロだって、全ての植物の学名に精通している方は少ないでしょう。もういいじゃん、自分で「ジョゼフィーヌ」とか、「肉団子」とか付けちゃえばさあ。(いい加減
そうそう、日本名でハオルチア ハオルシア ハウォルチア、どれー?どれが合ってるのー?って気にする必要は全くありません。国名みたいに、日本語では「ハオルチア」と表記する!なんて決まっているわけでもありません。日本ハオルチア協会があるから「ハオルチア」が正解、ってわけじゃない。ハウォルチアって読んだら恥ずかしいわけじゃないです。英字のつづりの読み方ってそれぞれですし、日本語(カタカナ)で正確に表記できるもののほうが少ないでしょう。
以上、素人がえらそーに書く学名のツレヅレでした。御精読、ドーモありがとうございました。下記は参考の覚え書き。後で読むべし(自分宛て)。
- 昔は単に「ティラノサウルス」と呼んでいた恐竜が、「ティラノサウルス・レックス」と呼び方が変わってしまったのは何故ですか?(Q&A 学名について)
- 学名について:くーまるウォッチング
- 植物の分類と名前について
- 植物の学名について調べる | 国立国会図書館-National Diet Library
- 〔その他 > ツレヅレ〕カテゴリの過去ログ
- ウェブ屋が付け焼き刃で植物の分類の話などしてみます(前編) (10-11-01)
- 屋久島梅鉢草の可愛さを思い知rensis (10-10-25)
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コメント
昔の学者さんってカッコイイです。
植物学名なんかの本を読むと出てくるプラントハンターなんかもう映画化決定!ってなもんですよ。
異国の地から未知なる植物を持ち帰って大英帝国の温室に保管する・・・ロマンですな。
うちも学名書くときはちゃんとイタリック体にせねばw
斜めタグ閉じてないトコあったし!
イタリック過ぎだよ自分!
だってだってSafariで見たら普通だったんだもん!←甘えるのがブームかw
プラントハンター!
映画化されて、見に行くの身内ばっかりだったりして(笑)
私達はあーだこーだ言うだけだけど、分類学って相当大変ッスよね。
ense で採取したものがensis になるんだね。
こういう読み物は大好きだから、これからもどしどし書いて下さいね。
写真(ぼかし入りだけど)もなかなかの才女っぽいし、salsa女史って呼ぼうかな。
普段は間違いそうで学名表記はしていませんが、じっくり見てなるほどねーって思う部分は確かに多いですね。
やめてくださいよぅ。分不相応な呼び名はw
ツレヅレものは好きなんですけど、書くのに時間がかかるのがちょっと(笑)。でも素人なりに考えるのは好きなので、またあったら読んでやってください。
■ちまきさん
タグで囲むの、めんどいっちゃめんどいんですがw
出てないのも多いので、いっそ中古のラテン語辞典でも買いそうな勢いですw